新型コロナ感染症対策 妊婦の方々へ&小児Q&A(日本小児科学会)

 

妊娠中の皆さまへ
4 月 7 日に日本国政府が新型コロナウイルス感染症に対しての非常事態宣言を発出し、皆さ まのご不安も強いと思います。これまで日本産科婦人科学会は日本産婦人科感染症学会と 連携して、医学的な情報を提供してまいりました。
今後もこの情報にご注目いただくとともに、改めまして基本的なお願いを申し上げます。
妊婦の皆様へ
・妊娠中に新型コロナウイルス感染症にかかる率は一般の方と同じです。
手洗いや人との距離をとる(3 密を防ぐ)などの注意も同じです。日本より多数の感染者を 出している国々で、妊婦が特別にこのウイルスにかかりやすい、という報告はありません。
・幸い、妊娠中の重症化率も一般の方と同じかむしろ低い値が報告 されています
集中治療室入室率なども、人口当たりになおすとむしろ低めの報告がなされています。
急な帰省分娩の検討はぜひ避けてください。
分娩は予約された数によってその体制が決まっています。特に地方の小規模施設は急に受 け入れる余裕がないところがほとんどなので、移動するほうがリスクになりかねません。
・感染予防のために付加的な医療サービス(立会分娩、面会など)が 制限されます
その施設の方針に従ってください
・妊婦健診は重要であなたとあなたの赤ちゃんのいのちと健康を守 ることが証明されています。しかし、妊婦健診の間隔を延ばしたり、 超音波検査の回数を減らす、パートナーの立会いをお断りすることがあります。不安な症状がその間にあれば、どうぞ電話などでご相談 ください。
施設全体の感染防御策や担当医の指示に従ってください
・感染予防のために現在新型コロナウイルスに感染中の方や強く疑 われる方の分娩方法や授乳方法を変えざるを得ないことがあります
施設ごとに医療資源や、感染防護に使うことができる機材が異なっています。帝王切開を積 極的に行うこともやむを得ない施設が多くなっています。施設の方針をご確認ください。
令和 2 年 4 月 7 日 日本産科婦人科学会理事長 木村 正 日本産婦人科医会会長 木下勝之

 

小児Q&A

Q 子どもが新型コロナウイルスに感染するとどのような症状がでますか?

A:子どもの感染者数は成人と比べると少ないですが、感染しやすさは成人と変 わらないこともわかってきました。家庭内で感染している例が多く、発熱、乾 いた咳を認める一方で、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ない様です。 成人と同じように、発熱が続き肺炎になる例も報告されています。一部の患者 では嘔吐、腹痛や下痢などの消化器症状を認めます。血液検査でも明らかな特 徴はありません。胸部エックス線検査や肺の CT 検査を行うと肺炎が認められる 患者もいますが、ほとんどが 1ー2 週で回復しています。感染していても無症状 である可能性も指摘されていますが、子どもは正確に症状を訴えられないこと に注意しなければなりません。

Q 子どもの新型コロナウイルス感染症は重症化しますか?

A:小児患者が重症化する割合は成人と比べるとかなり低いようです。しかし、 成人同様に呼吸状態が悪くなることもあります。年齢の低い乳児などは注意が 必要です。

Q 小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもに関して特に注意すべきこ とはありますか?

A: 一般的に小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもの呼吸器感染症は 重症化する可能性があります。ただ基礎疾患ごとにリスクや対応は異なります ので、かかりつけの医師にご相談ください。また、周囲の人が感染しないよう に気を付けることが重要です。

Q 母乳はやめておいた方がいいですか?

A: 母親が感染している場合は、接触や咳を介してお子さんが感染するリスクが ありますので、直接の授乳は避ける必要があります。母乳自体の安全性につい ては現時点では明らかではありませんが、中国からの報告では、感染した女性 6名の母乳を調べたところウイルスは検出されなかったと報告されています。 従って、母親が解熱し状態が安定していれば、手洗い等を行った上で搾乳によ り母乳を与えることは可能と思われます。

Q 子どももマスクはしておいた方がいいですか?マスクが出来ない場合はど うしたらいいですか?

A: 感染している人のくしゃみや咳に含まれる飛まつを直接浴びないという観 点からは、マスクをすることの利点はあるかと思いますが、小さなお子さんで は現実的ではないと思われます。子どもの患者のほとんどは、家庭内において 親から感染していますので保護者の方が感染しないこと、感染した方から 1-2 メートル以上の距離を保つことがお子さんの感染予防につながります。また、ウイルスに汚染されたおもちゃや本などに触れた手で、口や鼻、目を 触ることでも感染しますので、手洗いや消毒も大事です。

Q 子どもの症状が新型コロナウイルスによるものかもしれないと思ったら早 めに医療機関を受診した方がいいですか?

A: 現時点(2020 年 3 月 21 日)において、国内で新型コロナウイルスに感染している 小児は徐々に増えつつありますが、依然として他のウイルスによるものの感染の可能性が高いと考えられます。地域による差がありますので、お住いの地域の保健所 などの情報にご注意ください。実際には、新型コロナウイルス感染症を疑って一般の医療機関や休日夜間急病診 療所等を受診しても、診断を確定するための検査はできません。むしろ受診によって 新型コロナウイルスの感染の機会を増やす危険性があることを念頭におく必要があ ります。さらには、新型コロナウイルス感染の軽症者に対する特異的な治療法はありません。 今の段階では、呼吸数が多い、肩で息をする、呼吸が苦しい、唇や顔の色が悪いな ど、肺炎を疑う症状があり、入院加療が必要と考えられる場合を除いては、新型コロ ナウイルス感染症を心配して医療機関を受診することはお勧めできません。

なお、厚生労働省からの新型コロナウイルス感染症を疑う基準では、「37.5°C以上 4 日」とありますが、この基準では、小児の「風邪」の多くが当てはまってしまいます。こ の基準は成人・高齢者では適当ですが、小児では実際的ではなく、帰国者・接触者相 談センターへの電話の機会を増やし、回線が通じにくくなる可能性を高めます。

小児では、原因不明の発熱が続く、呼吸が苦しい、経口摂取ができない、ぐったりし ているなどの様子が見られるときは、速やかに医療機関を受診してください。ただし、 小児であっても濃厚接触者や健康観察対象者である場合は、まず地域の帰国者・接 触者相談センターにご相談ください。

Q 病院における面会は全面的に禁止したほうが良いですか?

A: 入院中の子どもにとって保護者の方との面会は非常に重要です。小児への面会 については、必要最小限の人数に絞り、感染対策を強化しながら継続が望ましいと 考えます。また、面会者の方は、自宅で体温を測り、咳、鼻汁、下痢、嘔吐などの症 状がないことを確認した後、子どもの面会前には、手洗いとマスク着用などの感染対 策を守ることなどの協力が必要です。

Q 保育所、幼稚園、学校などに行くことは控えたほうが良いでしょうか?

A: 現時点では、国内の小児の患者は少なく、多くは成人の感染者からの伝播による ものですので、保育所、幼稚園、学校などへの通園、通学を自主的に控える理由は ありません。しかしながら、地域で小児の患者が発生した場合、またはそれが想定さ れる場合には、一定期間、休園や休校になる可能性があります。今後の地域での流行状況に応じて、臨機応変な対応が必要となりますので、お住まいの地方自治体か らの指示に従ってください。

また、各家庭内で感染者がでた場合は、その子どもは濃厚接触者として登校、登 園を控えることになります。また、厚生労働省から微熱や風邪の症状がある場合は、 登校、登園を控えるようにという推奨が出ています。それらを守っていただくことが大 事です。

Q 学校が休校となりましたが、子どもは外出や友達と遊ぶことを避けたほうが良い でしょうか?

A: 子どもにとって遊ぶことは、心身の発達においてとても重要です。感染のリスクを 下げるために以下のことを守れば、外出や子ども同士の遊びは可能です。

〈屋外における遊び〉 屋外の遊びであれば感染伝播のリスクは低いと考えられますが、以下の点を確認し 注意して下さい。 ・風邪症状(のどの痛み、咳、発熱など)があるときは、外出は控える ・みんながよく触れる場所に触った後は手洗いをする
・飲食の前にも手洗いをする

〈屋内における遊び〉 屋内における遊びについては、屋外よりリスクが高くなりますので、以下の点を確認し 注意して下さい。
・周囲に明らかな感染者がいない
・遊ぶ場所に高齢者や基礎疾患のある方がいない ・本人や家族に風邪症状(のどの痛み、咳、発熱など)がない
・少人数である
・保護者同士の了解が得られている ・みんながよく触れる場所に触った後は手洗いをする
・飲食の前にも手洗いをする

〈屋外・屋内で遊ぶ際に起こりやすい事故への対応・予防策〉 こちらをご参照下さい。
http://kodomo-qq.jp/jiko/index.php (日本小児科学会 こどもの事故と対策)

Q 乳幼児健診や予防接種を遅らせたほうが良いですか?

A: 乳幼児健診の目的は、年齢ごとに起こりやすい病気や問題を早めに見つけて治 療などに結び付けることです。予防接種についても、感染症にかかる前に接種する事 が極めて重要です。

新型コロナウイルス感染症を予防するための対策も重要ですが、極端な制限によっ て予防できる他の重要な病気の危険性にさらされることを避ける必要があります。今 後も数か月単位での流行が想定され、その間に乳幼児健診や予防接種を回避する デメリットは大きいと考えられます。実施にあたっては、いつも以上の配慮が必要にな りますが、保護者と実施者が協力し可能な限り予定通りに実施すべきと考えます。

まず、集団健診や集団接種を実施している自治体においては、臨時的にでも個別 健診や個別接種を可能としてください。本来なら接触する可能性のない子どもや成人 を同じ場所に集めないだけで、非常に有効な感染拡大防止に繋がります。また、保健 指導等は必要に応じて電話等でおこなうことも検討してください。 集団・個別に関係なく、一般的な感染症対策として、お子さんや付き添いの保護者 の方については、発熱や咳などの症状がないことを確認すること、成人では手指消毒 や手洗いの励行とマスクの着用は必須です。

また、可能な限り、きょうだいや祖父母などの同伴を避けること、健診や予防接種の 会場や医療機関でオムツを替えないこと(新型コロナウイルスは糞便中に排泄される 可能性が指摘されているため)も心がけてください。

どうしても集団で実施する自治体においても、時間ごとに来場・来院する人数を調 整したり、会場の動線などに配慮して人の接触が最小限になるよう工夫すると共に、 必要に応じて会場や器具の消毒や来場者の手指消毒や手洗いができるよう資材等 を準備してください。加えて、健診や予防接種の機会を逃したお子さんについては、 後日必ずその機会が与えられるよう配慮してください。