山中伸弥教授による新型コロナウイルス情報発信   5つの提言(5月14日版) 他

京都大の山中伸弥教授が新型コロナウイルスに関する情報発信サイトを開設されました。

山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

https://www.covid19-yamanaka.com/index.html

接触確認アプリ(COCOA)を活用しよう!

厚労省が接触確認アプリをリリースしました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/cocoa_00138.html
感染者をいち早く同定することは、経済社会への影響を最小限にする上で非常に重要です。
他のアジア諸国で用いられているアプリ(GPS機能を用いて、個人の行動履歴を国家が管理する)ものとは全く違います。Bluetooth機能によるスマートフォン同士の近接履歴がスマートフォンにのみ記憶され、国などに情報が伝わることはありませんし、行動履歴などの個人情報は残りません。自分が感染者と接触があった場合に通知されますが、それがいつ、誰であったかは通知されません。多くの人が社会貢献として利用されることを切に願います。
私も2台のスマホで利用を開始しました。Playストアでも、Apple Storeでも”COCOA”で検索しても発見できず、アプリを探すのに少し苦労しました。また”国が違う目的に利用するのでは”とか”個人情報が残るのは嫌”といった誤解も多いように思います。より積極的な広報が必要と思います。

マスクの重要性(6月16日)

Zhang et al., Identifying airborne transmission as the dominant route for the spread of COVID-19. 米国科学アカデミー紀要 6月11日オンライン版
https://www.pnas.org/content/early/2020/06/10/2009637117
(内容)
新型コロナウイルス拡大の中心は、武漢からイタリア、そしてニューヨークと移行した。この3か所における対策と、感染者数の動向を比較検討した。その結果、Social distanceやLockdownの効果は限定的であり、イタリアでは4月7日に、ニューヨークでは4月16日にFace maskの着用が義務付けられてから、感染者の減少が促進された。新型コロナウイルス感染症においては、飛沫や接触感染よりも、微小飛沫(エアロゾル)による感染が重要であり、マスク着用が感染拡大に効果的であると考えられた。
(コメント)
シカゴの小山先生に教えて頂きました。マスクを外さなければならない食事時の対策が重要と考えられます。

ニューヨークではマスクが推奨されてから感染者数の減少速度が加速した。

距離を空けることの重要性

オハイオ州が作成したビデオ。
新型コロナウイルスの勢いを弱めるためには、人と人が2メートル程度の間隔を空けることが重要であることを訴えています。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=15&v=o4PnSYAqQHU&feature=emb_logoBy Ohio Institute of Health
https://coronavirus.ohio.gov/wps/portal/gov/covid-19/home

5つの提言(5月14日版)

提言1 対策はこれからが本番。賢い行動を粘り強く続けよう。

緊急事態宣言の効果で、大都市では感染者が減少し、新たな感染者の発生していない地域も多くなってきました。しかし、油断大敵です。新型コロナウイルスへの対策はこれからが本番とも言えます。ウイルスは私達を試しています。緩んだところから、一気に勢いを取り戻します。ウイルスの勢いが少し弱まっている今こそ、次の波に備えた準備を整える必要があります。

提言2 国民全員が日常を見直し、人と人の接触を減らそう

新型コロナウイルスは対策を止めると、1人の感染者から少なくとも2.5人くらいに感染すると考えられています。10人から25人です。これをR=2.5と表現します。油断すると感染者は対数的に急増します。感染者を横ばいにするには、Rを1程度にする必要があります。1人の感染者が他の1人にしか感染させないと、感染者数は横ばいになります。そのためには、人と人との接触を1/2.5=0.4で4割にする、すなわち6割減にする必要があります。国民全員が自らの生活を見直し、人との接触を6割減に維持する心構えが必要です。
しかし、6割減を長期間にわたり持続することは、経済への影響が甚大です。国や自治体からの継続的な対策と支援が必要です。また、6割減ではなく、5割、4割と社会・経済活動の制限を緩和するために、次の対策が必要です。
・感染者の同定と隔離
・医療や介護体制の整備
・ワクチンと治療薬の開発と大量製造

提言3 感染者の同定・隔離システムを充実させよう

誰が感染しているかわからない状況でRを1程度にするためには、国民全体が人と人との接触を6割減らす必要があります。しかし、感染者を同定・隔離することによりRを効率よく減らすことが出来ます。R=2.5の時、10名の感染者から25名の2次感染者が生まれます。しかし、10名のうち4名を同定し隔離することにより2次感染を予防すると、残りの6名から15名への2次感染がおこります。Rは1.5に減ることになります。クラスター対策の重要性は効率的にRを減らすことであると言い換えることが出来ます。PCRや抗原検査を拡充することにより感染者を見出す割合を増やすことが出来ます。感染者の多くは、入院の必要のない軽症や無症状の方です。これらの方を快適、安心に隔離することのできる宿泊施設の体制強化も必須です。

提言4 医療や介護従事者を守ろう

中等症や重症の患者さんを治療するベッド数や医療従事者の数が増えることにより、Rが1より少し大きくても医療制度を維持することが出来ます。発熱外来、中等症専門病床、重症専門病床の役割分担が必要です。医療体制と同様、介護体制の充実も必要です。
・医療や介護現場における検査体制を強化し、クラスター発生を予防
・医療従事者や介護職員に対する防御具や手当の充実
・医療従事者や介護職員に対する偏見、差別の撤廃
が求められています。

提言5 ワクチンと治療薬の開発・大量製造を推進しよう

ワクチンは感染を予防し、Rを効率よく減らします。治療薬は、感染者の重症化を減らし、医療や介護への負担を減らします。
・研究者や製薬企業はワクチン・治療薬の開発にあたり、競争よりも協調を重視。
・国は審査や承認にあたり、前例にとらわれない迅速な対応。
・製薬企業は、世界を見据えた大量製造の準備を整備。
が求められています。

 

山中伸弥による5つの提言 (4月22日版)

 

提言1 自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守ろう

緊急事態宣言が全国に拡大されましたが、感染の拡大は止まりません。自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守るために、4つの行動が求められています。
1.人と人との接触を減らす
4月22日、専門家会議は10の具体的な項目をあげました。私たちが、これらの項目を賢く、粘り強く遵守すれば、ウイルスは力を失います。日本人の規律の高さを示す時です。
2.社会を支える方々への敬意と感謝
皆が感染におびえる中でも、医療、流通、公共交通など多くの方々に、社会を支えて頂いています。これらの方々への感謝の気持ちが、いつも以上に強くなっています。これらの方々を守るためにも、人と人の接触を出来うる限り減らさなければなりません。
3.感染した方への思いやり
誰にでも感染は起こり得ます。1,2年後には半分くらいの日本人が感染している可能性もあります。感染した方への偏見や差別は無意味です。
4.休業を余儀なくされる方々への支援
飲食店、芸術家など多くの方々が休業を余儀なくされています。社会を守るため犠牲になって頂いています。国や自治体からの支援に加えて、自分で出来る支援を行いたいと思います。

 

提言2 医療体制を整備し、医療従事者への偏見をなくし、医療崩壊を防ごう

無症状者・軽症者用施設の拡張
ホテル等を利用した無症状や軽症感染者の専用施設設置が広がっています。日本の住宅事情では、感染者の自宅待機は困難です。無症状者の自治的活動や、感染後に回復した方の活用も検討し、出来るだけ収容できる数を増やすことが必要です。また滞在される方のストレス軽減も重要な課題です。医療従事者の保護
重症者、重篤者の増大により、医療従事者の労働が過剰になり、感染のリスクも高まります。
・感染病床の増床
・人工呼吸器や防御服の増産、自治体をこえた柔軟な利用
・ローテンションなど、医療従事者の過重労働の軽減
・医療機関による役割分担体制の整備
・医療従事者の感染症対策に関する教育
・緊急性の低い、他疾患に対する処置や手術の延期
・抗体陽性者の活用
医師・看護師など医療従事者を、感染と過重労働から守る必要があります。
医療現場で細心の注意を払っても院内感染は起こり得ます。それがこのウイルスの怖さの一つです。最前線で活動されている医療従事者に最大限の敬意を表します。

提言3 目的を明確にした検査体制の強化

検査を国民全員に行うことは不可能です。検査の目的を明確にし、目的に応じた戦略が必要です。
1.感染が疑われる方の診断のための検査
医師の判断で、速やかにPCR検査が実施できる体制が必要です。
2.院内感染予防のための検査
他の病気で入院される方や医療従事者のPCR検査が必要です。各病院でのPCR検査体制を整備するとともに、無症候であっても保険適用が必要です。
3.市中感染の広がりを把握するための検査
数千人単位の調査が必要です。PCRでは困難です。抗体検査がより適しています。感染の広がりを把握することは、活動制限の程度を決定する上で不可欠です。抗体検査は、現状では感度や特異度が不明であり、1人1人の感染の有無の判断に使うのは危険です。しかし、集団として、どれくらいの人が感染したかを推察する目的では、極めて有用です。PCR検査は、現在の10倍、100倍と検査体制を増やす必要があります。大学や民間の研究機関も活用するべきです。

提言4 国民への長期戦への協力要請と適切な補償

2月末のイベント自粛や休校措置の際、「ここ1,2週が山場」という言葉が誤解され、3月中旬に人が観光地や繁華街に溢れました。今回の緊急事態宣言においても「1か月頑張ろう!」という発言が誤解される可能性があります。厳格な対応をとっても、中国では第1波の収束に2か月を要しました。アメリアでは3か月と予測しています。第1波が収束しても、対策を緩めると第2波が懸念されます。対策は、ワクチンや治療薬が開発され、十分量が供給されるまで続けなければなりません。数か月から1年にわたる長期休業の間、事業主に対しての補償、従業員に対しての給与の支払いや再開時の雇用の保証を、国と自治体が行う必要があります。
国民に対して長期戦への対応協力を要請するべきです。休業等に対する強力で迅速な対策が必須です。

提言5 ワクチンと治療薬の開発に集中投資を

ワクチンは、早いものは臨床試験に入りました。しかしワクチンの開発は臨床試験に入ってからも時間がかかります。1年以上を要する可能性が高いです。アビガン等の既存薬が期待されていますが、過度の期待は禁物です。新型コロナウイルスの特性に応じた治療薬の開発が緊急の課題です。アメリカ等でワクチンや治療薬が開発されても、日本への供給は遅れたり、高額になる可能性もあります。産官学が協力し、国産のワクチンと治療薬の開発に全力で取り組まなければなりません。